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「ごあああっ! ぐああああっ!」
「コラ阿仁谷! 起きろ阿仁谷望丸!」
頭に衝撃を受け、おれは夢の世界から連れ戻された。
ぼやけた視界の中から、丸めた教科書を持ったイシケンのしかめっつらが現れた。
「お前な、よく堂々とイビキをかいて寝られるな」
「いやあ、先生の子守唄が寝やすくって」
「お前のお守りをした覚えは無い。それと、口の周りに米粒がついてるぞ。今日もお袋さんに弁当を作って貰ったのか?」
「はい。給食だけじゃ満たされないんで」
イシケンは眉間と額のシワを増やし、おれに激を飛ばした。
「どうしてお前はいつもいつもいつもいつも! 身勝手で自分に甘いんだ! そんなんだから心も腹も弛んでいるんだ--」
瞬間、おれの中で何かが生まれようとし、机に手を着き勢いよく立ち上がった。
「石形先生っ!」
「な、なんだ?」
「う○こしてきます!」
おれは排便の断りを入れ、背後から笑い声がする中、教室を後にした。
やれやれ。今日もおれの中に巣くう“欲求”達に勝てなかった。
てかみんなはどうして平気なんだ? みんなの中にも奴らは生息しているハズなのに、なんで打ち勝てるんだ? というか、勝つ必要なんかあるのか?
人間、腹が減れば食わなきゃいけないし眠くなれば眠らなければならない。そして出したかったらすぐに出す。どれも生きる上で当たり前の行為だ。無理に我慢なんかしていたら体に毒。下手したら寿命を縮めているかもしれないのに。
全くみんな、生きるのがヘタクソだな。
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