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うららかな春の日差しが差し込む午後、私はお母様よりある重大な事実を告げられていた。
「それは本当なのですか?」
突然の告白に私は思わず声を荒げる。しかし、ふとお母様の方をみると何かを決意したかのような表情でこちらをみていた。そして、そんなお母様の口から思いがけない言葉が出てきた。
「…もし、もし結婚が嫌だと言うのならば、回避する方法が一つだけあります。」
「え?」
「勇者になるのです、ありす。」
私はその言葉に理解が出来ず、その場に立ち尽くしてしまった。私が勇者になる、ですって?勇者と言えば、古来より世界を救う存在として人々から敬まれてきたが、その存在に私がなるというの?温室育ちで世間知らずのこの私が!?私が不安な顔でいると、お母様は優しい顔でこちらを微笑みこう言った。
「大丈夫です、ありすならきっとなれるわ。」
何を根拠にそんな事を言うのかわからなかったが、私が自由を得る為には勇者になるほかないので渋々うなづいた。しかし、勇者…か。この決断は今の私にとっては藁にも縋るといった所だが、藁ではなく茨だったのかもしれないと、後の私はそう思うだろう。
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