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そして、私は旅の仕度をすると、お父様のいる書斎へと向かった。二回ノックをしたあと「どうぞ」という声がしたのでゆっくりとドアを開けて中に入っていった。お父様は、上機嫌といった感じの顔で手に持っている何かの資料を見ていた。それは、資料ではなく私の結婚相手の写真だったのだが…。お父様が口を開く前に言いたかった私は、比較的大きな声でこう言い出した。「お父様、先立つ不幸をお許しください」と。お父様は何事かと驚き、手にしていた私の結婚相手の写真を床に落とした。そこには、凛々しい青年が写っていた。…だが、お父様はそんな写真には目もくれずに私の所に一目散に向かってきた。
「い、い、一体それはどういう事だい?ありすちゃん。」
小太りで多少弱気な性格のお父様は、私の事を「ちゃん」付けで呼ぶ。私はそれが嫌ではなかったが少し恥ずかしかった。私は勇者になって家を出る事をストレートに告げた。すると、お父様は「そんな事は許さない」と屋敷の兵士に命令して、私を地下牢に閉じ込めてしまった。結婚の日までここに監禁するつもりらしい。いつも弱気なお父様からは想像出来ないくらいの強引さだった。
地下牢といっても清潔感があり、お風呂やトイレやキッチンも付いていた。ってかコレ地下牢じゃないんじゃない!?私は心で激しく突っ込みを入れると、傍のベッドに腰をかけた。「はぁ、私…自由になれないのかしら?」深いため息をつき、横になるとそのまま眠ってしまった。
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