家出の理由

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「それと、ひみつ、こくはくです」  バリバリっと、頭上で変わった音がして思わず顔を上げる。 「……ジ、ジロー?」 「うぬー」と呻きながら、ジローが自分の頭を剥いでいる。  ジローが……脱皮してる? 「ぷはっ」  ひょこりと出てきたのは、長いまつげの、金髪の美青年。 「これが、ほんとうのジローです。このほしと、そっくりのところからきました」   それって……  綾ちゃんから聞いた、SF映画を思い出す。 「もしかして、宇宙船が不時着したの?」  ジロー? が、首をかしげると、美しい金髪がさらりと揺れた。 「ちがいます。ここは、りゅうがくすぽっとです。ことばとか、ぶんかとか、れんしゅうします。このふくは、りゅうがくせいのふくです。いろんなかたち、あります」  ……頭が混乱する。  つまり、綾ちゃんが見かけた空飛ぶカピバラとか、巨大ネズミって、ジローの国の留学生ってこと?  あの松林のNo.3って? 「しばらく、おこめつぶ、の、けんしゅうしてました。おこめ、じかん、かかりますね。ごはん、だいすきです」  色々たずねたいことはあるけれど。  わたしは頭を振って、もう一度、ジローのふかふかのお腹を抱きしめ、笑った。 「今日の夕飯は、ジローの作ったお米を炊いて、肉じゃが作ろう」  ジローはにぃっと、白い歯を見せて笑った。 「肉じゃがも、あなたも、だいすきです」                          おしまい
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