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夕方5時。
わたしは「No.3」の松林に向かった。今度は、わたしがジローをまちぶせる。
「ジロー? ごはんだよ~」
わたしの声は、林に溶け込んだ。
夕方5時。「No.3」の松林。
「今日は、肉だらけの肉じゃがにしようかな?」
少し大きな声が、林に響いた。
夕方5時。「No.3」の松林。
「あきたこまちの新米買っちゃった。甘くてねばりもあって、おいしいぞ~」
「ぞ~」の部分が、林にこだまして、消えた。
夕方5時。「No.3」の松林。
「ふんぱつして牛肉買っちゃった! 牛肉じゃがってどんな味だろう」
わたしは、きょろきょろジローを探し回った。
夕方5時。「No.3」の松林。
「ジロー、出ておいで~~~~」
わたしは、叫んで、叫んで、叫んだ。
夕方5時。「No.3」の松林。
「ジロー、どこにいるの?」
わたしのつぶやきは、しっとり林を濡らす秋雨に消えた。
出会った日のように、5時を知らせるチャイムが歪んだ音を奏でていた。
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