4周目

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「は、花巻先生が普通じゃないのはわかりましたけど、だからといって彼が幽霊だってことの証明にはなってないじゃないですか!無茶苦茶ですよ!」 俺は驚きのあまり、半ばヤケクソになって反論してみた。だが、俺もなんとなくわかっていた。幽霊のような何かが実際に存在する以上、あの男子が幽霊でないと決めつけられないことに。 「うーん、正体明かせば信じてくれるかなと思ったんですけど…まあいいです、とりあえず彼が幽霊っていう前提で話をさせてください。本題になるのは、どうして図書館を潰させたくないかってところなんです。」 ため息をつきながら、花巻先生はさらに続けた。 「彼はかなり長い間ここにいる、いわゆる地縛霊です。ここがなくなってしまっては、彼のこの世での居場所がなくなってしまいます。」 そのまま話を進められたので、仕方がなく俺も話を合わせることにした。 「仮にそうだったとしても、ここがなくなると居場所がなくなるなら、成仏か何かするでしょうし、却っていいんじゃないですか?」 花巻先生は首を横に振った。 「いいえ。力づくで居場所だけを奪っても、彼を傷付けるだけで良い方向にはつながりません。私としてはともかく現状維持することが一番かなと思っているんです。」 花巻先生がそこまで言い終えたとき、窓が突然開いた。一陣の風が吹き抜け、気付くと花巻先生がいなくなっていた。 「ごめんなさい、時間切れみたいです。またお話しましょう。田中先生にはこの学校の中で一番期待しているんです。」 脳に直接響き渡るような声が聞こえ、あとには静寂だけが残った。 「…いくら俺があまりリアクションしなかったからって、あんなに急にいろんなことを言わなくても…」 正直キャパオーバーだ。 そのあとの仕事は手に付かなかったので、適当に言い訳して早めに帰った。もしも花巻先生の言うことを鵜呑みにするならば、明日から忙しくなるかもしれない。どちらにせよ、花巻先生とまた話す必要がありそうだ。
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