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気付くと僕は扉の前に居た。
他には何もない。
回り込んでも同じこと。
そこには扉しかなかった。
真っ暗の中、やけに扉だけが鮮明だ。
おそるおそる扉に手を掛ける。
――ギィィ
古めかしい音をたてて扉が開いた。
でも、扉の先にも周囲と同じ暗がりがあるだけだった。
扉をくぐると声が聞こえた。
「くぐったね。夢の扉への入り口を」
「――ッ!」
反射的に声のした方を振り向く。そこには扉の上に座っている少年がいて、無機的な目で僕を見下ろしていた。
「き、君は誰?」
途端に少年はニッコリと微笑んで答える。
「僕はここ、夢の扉の管理人だよ」
少年が左右に手を広げると、無数の扉が現れた。見渡す限り一直線に扉が並んでいる。
「夢の扉?」
「ここは、夢の扉を司る場所。ここからならどんな夢でも、好きなように見ることができるんだ。一種の明晰夢だと思ってくれていいよ」
状況が分からず不安だったけど、夢、と聞いて安堵した。夢ならそんなこともある。明晰夢を体験したことはないけどせっかくだし楽しもう。そう思うことにした。
「さぁ、どんな夢を見る?」
「じゃあ――」
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