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不意に、ひとつの疑問が僕の頭を過った。
人は寝てる間に何個くらい夢を見てるものだっけ?
「ねぇ、管理人さん?」
「何だい?」
僕の呼び掛けに不思議そうな顔をする。そのくせその先は口にするなと言っているような雰囲気だ。
「そろそろ起きた方がいい時間かなって」
そう言った僕に少年は打って変わってニコリと笑顔を向ける。
「もう少しゆっくりしていきなよ」
「いや、そう言うわけには…」
「もう見たい夢、ないの?」
なんだか雲行きが怪しくなってきた。
「うん。そろそろ起きるよ」
「んー起きれないよ」
「え?」
「君は夢の扉の入り口から入ってきた。出るときも同じだよ」
少年が左右に手を広げると、初めに見た光景と同じ様に彼方まで一直線に続く無数の扉が現れた。
「この中の1つが夢の扉からの出口。それ以外は次の夢への入り口だよ」
「そんな…」
「夢のシチュエーションは君がここに来た時の脳から生み出してるから無限じゃないし、いつかは当たりを引けるでしょ」
そう言い残し、少年はじゃあねと手を振り姿を消した。
「だ、誰か助けて…」
……どのくらいの時間がたったのだろう。あれ以来、少年は姿を現さず、僕はひたすらに夢を渡り歩いている。
end.
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