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この城の土牢に繋がれた男の最後の望みは、国主として望むには余りにも身勝手なものだった。
『俺の死に追従するのは、あれだけでいい。
民も、国も、兵も、全部お前にやるよ。
だから……』
「自らは死ぬことができない殺戮人形を、殺すことで己の元に送ってくれ……とはな」
クラリとめまいがするのは、おそらく切り落とされた右腕から多くの血を流してしまったからだ。
『殺してやってくれ』
決してあの男の、狂気にも似た恋慕の情にあてられたからではない。
「国も民も荒らさず大切にしてくれるなら、己は愛した女と死ぬことしか望まないとは……」
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