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青い光の乱舞を引き付き連れて散った女の跡には、豪奢な青い衣と城主が放って渡した銀かんざししか残されていなかった。
躯は、欠片も残されていない。
それがあの女が異形の存在であったという何よりの証だった。
「いくら天下の覇権に近付けるとは言え、あまりにも部が悪い取引だ……」
城主の限界はそこまでだった。
ついにカクリと膝から力が抜ける。
その様に唯一生き残った番兵が慌てて駆け寄ってくるのが見えた。
「国よりも、一族よりも、惚れた女を取るとは酔狂な」
うらやましいとも、迷惑なとも思いながら、城主の意識は闇に落ちた。
《了》
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