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カランッという音が耳を叩いたことしか、新米の番兵には分からなかった。
風もないのにユラリと松明が揺れ、ドロリと濁った影が不気味な乱舞を作り出す。
その中に唐突に現れたその影は、不意に光の軌跡を作り出した。
「ひ……っ!!」
それは携えられた二振りの刃が宙を走った証だった。
追従する影は日の光の下で見れば鮮烈な赤を宿していたことだろう。
金気臭いにおいが夜気をひそやかに染め変えていく。
「……ほう、現れたか」
惨劇の向こうから、番兵の主である城主の冷静な声が聞こえたような気がした。
「秋篠(あきしの)家秘蔵の殺戮人形」
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