青藍の狂華

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 その声に、惨劇の中心にいた影がユラリと立ち上がる。  影は、女だった。  鮮血に染まる夜風に見事な黒髪が翻る。  その下にある容貌は天女のように美しい。  豪奢な青色の衣を翻して立つ女は、高級女郎もかくやという美姫だった。  裾を割ってのぞく白い太ももも、肩口や袖元からのぞく肌も、震えがくるほどなまめかしい。  だがその両手に手挟まれた二振りの血刀が、色気に釣られて群がろうとする男の性を牽制している。 「確か名は……青藍、だったか」  その声に呼ばれたかのように、閉じられていた女の瞼がフワリと開いた。  その色を見て、番兵はまたヒッと悲鳴を上げる。 「返せ……」  真夏の夜を彩る蛍のような。  月明かりを吸い込んだかのような。  女の瞳はそんなモノを思わせる、怪しげな光を纏う青色だった。
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