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ギンッと鈍い鋼の音が響き、城主の刀が押し合いに負けて弾け飛ぶ。
とっさに城主は飛び退るが、女の刀の動きの方がわずかに早かった。
軌跡に朱が舞い、右腕が体を離れて宙を舞う。
「……そうか、お前は」
だが城主は自身の右腕には目もくれず、目の前に立つ女だけを見つめていた。
「主のことを、一人の女としての立場から、好いていたのか」
その言葉に、女が動きを止めた。
光彩は水色、瞳の色は青。
そんな青藍色の瞳が、ほの暗く激情を宿したまま城主を見据える。
「秋篠が処刑の時に言っていた。
『私を追ってくる女がいる。私が望む、望まずに関わらず、必ずあれは私を追ってここに来る』とな」
その瞳が、城主の言葉を受けて、揺れた。
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