5人が本棚に入れています
本棚に追加
「渡してやってくれと、預かった物がある」
城主は残された左腕を懐に入れた。
その動きに合わせてシャラリと、涼やかな音が響く。
「受け取れ」
城主はそれを、女に向かって放った。
「……っ」
それは、銀で作られたかんざしだった。
細やかな鎖細工の先には青玉と藍玉がはめ込まれている。
添えられた銀鈴とすりあって、玉は澄んだ音を奏でていた。
「主様……っ!!」
女の意識が、城主から逸れる。
その瞬間を、城主は見逃さなかった。
「っぁ……!!」
女の手から刀を奪い取り、返す刃で女の胸に真っ直ぐに切っ先を突き立てる。
女の体から、生身の人間のように飛沫が上がることはなかった。
最初のコメントを投稿しよう!