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森先生が次の生贄を指名する。
「はい、それでは、椿君、演じてみて」
生贄が決まった。声優候補生の椿君だ。
「はい」
また、ささやき声が聴こえる。
「うお~椿~」
「まじかよ。野田の「の」次が椿の「つ」ということは...」
「ランダム...死んだわ」
全員が安全圏で無くなった瞬間だ。まさに地獄。戦場だ。
椿君がアムロのセリフを吐く。
「いきます」
再度、森先生が戦闘のBGMを流す。地獄スタート。
「あっ!こんなことになるなんて...。俺は、まだ死ねないんだ(笑)生きてあいつのところに行かないと..約束したんだ(笑)だから(笑)じゃまを...するな!」
森先生の反応が気になる。
「はい...」
ささやき声がまた聴こえる。
「終わった..」
「うん、死んだね」
「苦しいセリフをにこやかに言いやがった」
「椿君、かわいそう..。でも、怒られるところを見たい」
森先生が話す。
「いや、完ぺきだ。もう俺から教えることは何もない。素晴らしい。感動している」
僕を含め、一同が声を漏らす。
「うそだろ...」
椿君が返答する。
「ありがとうございます(笑)」
森先生のスイッチが入った。
「お前ら!良く聞け!正直な話。実は演技なんてどうでもいいんだ!仕事が貰えるかどうかには、あんまり関係ない!」
生徒に衝撃が走る。
「声優で売れるためには、「顔」「巧い」「コネ」の3つのうちのどれかが必要だ!椿君は、みんなも知っている通り、YA事務所の社長の息子だ。椿君は既にこの「顔」と「コネ」を持っている。生まれた時点で声優だ。演技はオマケみたいなものだ!セリフが棒のアニメを何本も見てきた君たちなら分かるだろう?これが現実だ」
終わりのチャイムが鳴る。
森先生は最後に一言。
「あ~、はい。今日はここまで」
僕らはいつもの心にも無いお礼を言う。
「ありがとうございました...」
森先生が教室を後にする。
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