荒切

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「いいからとっとと寄越せ。俺は今、腹減って気ぃ立ってんだ」 「う……」  せっかくのイケメンなのに柄が悪い。  しかも御饌を欲しがるなんて、おかしな人だ。  あまり拒否すれば何をされるかわからない。  椿は渋々、鞄からお弁当を取り出す。 「最初からそうすりゃいいもんを。イチゴパンツ」 「は?」 「イチゴパンツの明智光秀、本能寺の変」 「あっ! さっきの聞いてた!?」  椿の顔が、かっと赤くなる。  丁度いい語呂合わせなのだが、さすがに男子に聞かれると恥ずかしい。 「なんで明智光秀がイチゴパンツなんだ」  くくっと笑いながら、少年はお弁当を椿の手から取り上げた。 「それは語呂合わせで……。あっ、テスト! 遅れる!!」  期末テストのことをすっかり忘れてしまっていた。  慌てて駆け出そうとして、ふと止まる。 「お弁当箱、後で返してください!」  いくら助けてもらったとはいえ、このままお弁当箱を取られるわけにはいかない。  中身はもう諦めたが。 「ああ、そうか。今すぐ食べるから待ってろ」 「そんな余裕ないんです! 急いでるんです!」 「じゃあ、後で届ける」 「いいです! ここに置いといてください!」 「別にいいけど、誰かに持ってかれても知らねぇからな」
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