あの夜、始まりの夜

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side:k 今、何て…? 「な、何?待ってた?……俺を?」 半信半疑で聞くと、皆月はコクンと頷いた。 …いや、意味、わかんねぇよ。 「な、何で?」 「…だから、つ、付いてくるなって、言った、から」 …言った。確かに言った。 「いや、付いてくるなってのは一緒にって意味だろ。後から帰って来いって言っただろ俺」 …言ったよな? あまりに訳が分からなすぎて、俺は思わず首に手を回して溜息をついた。 何こいつ。何なの。 俺は俯いて顔の見えない皆月を睨んだ。 「あのさ、普通に考えて分かれよ。なんで付いてくんなって言ったら待つって話になんだよ。お前が帰って来なかったらどうなるかくらい考えりゃ分か」 「…っだって!!」 突然皆月が涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げて、俺をまっすぐ見ながら叫んだ。 「だって!!付いてくるなって、き、気持ち悪いって、言ったじゃん!! だから、俺、付いて行かなかったっ!!」 普段話した事もない皆月がこんな大声を出している事に驚いて、俺はとっさに声が出なかった。 「みな…」 皆月は両手で身体をぎゅうっと抱き締めると、そのまま丸くなって、ひっくひっくとまた泣き始めてしまった。 待ってたって… こんな、雨の中で…? こんな、暗闇の中で…? 俺を…? (なんで…?) 「…付いて、行かなかったのに…ちゃんと、待ってた、のに」 皆月は丸くなったまま、膝の隙間から震えた声で呟いた。 「…待ってたのに、俺が、悪いの…?」
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