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あの夜、始まりの夜
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あいつとの出会いは小4。
2つ離れたクラスにちょっと変わった奴が転校してきたなんて話は聞いた事があったけど、実際にそいつと同じクラスになって、最初に抱いた印象は、確かに変な奴、だった。
授業の時以外は、とにかく先生にべったりと引っ付く。
それは担任だったり、各教科の先生だったり、とにかく近くにいる大人なら誰でも。あいつはクラスの誰とも話そうとせず、誰か先生の足に抱きついては、というかしがみついては顔をすり寄せ、じっと俯いていた。
けれど、どうした訳かあいつを咎める先生は1人もいなくて、いつも困ったように笑っては、あいつの頭を撫でていたように思う。
そんなあいつはやっぱりクラスの誰から見ても変な奴で、苛められはしないものの話しかけられる事もなく、遠巻きに避けられるような、そんな存在だった。
その頃の俺はといえば、昼休みのドッヂボールやサッカーに生き甲斐を感じているような健全なスポーツ少年だった。その為の仲間集めにも随分力を入れていて、同じクラスはもちろん、隣のクラスや下の学年にまで声を掛けて、それはもう立派な運動場支配軍団を築き上げていた。
だけど俺は、一度もあいつに声を掛けた事がなかった。
今思い出すと、俺はあの頃あいつが嫌いだった。苦手と言った方がいいのか。同い年にしては小さくて細い体。いつも誰か大人に隠れるようにしがみついて、日に当たらない白い顔を俯かせていた。
抱きつきたがりの甘えた。
ボールを当てたら全身崩れてしまいそうなあいつを、俺はどうしても、誘う気にはなれなかった。
親しく関わる訳でも、変に疎う訳でもなく、ただ存在を知っているだけ。
そんなあいつと俺の関係が少し近付いたのは、夏の林間学校の時だった。
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