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「…あ。」
頭の中をぐるぐるさせながら歩いていると、突然あいつが小さな声を挙げた。
「あ?…おっ」
ちょうど中間地点に辿り着いたようで、山道の端に分かりやすい、白い箱が置いてあった。
「おー、これだな。何だ、手突っ込めばいいのか?」
箱の上面に穴が空いていて、中にボールが入っているようだ。
俺は特に深く考えずに、お前が取れよ、と言った。
「え…っぼ、ぼく…?」
「おう、だって1番最初に見つけたのお前だろ。お前の手柄じゃん。」
「で、でも…」
つーかここ躊躇うとこか?
「いーから!」
俺はあいつの右手をグイッと掴んで、そのまま箱の中に突っ込んだ。
「!?…うぁ…っ」
「だーいじょうぶだって。んな、蛇とか入ってる訳じゃねんだし。ほら、1個取れよ」
俺はあいつの手の上から1つのボールを掴んんで一緒に引っ張り出した。
「な?ただのボール…だ…」
そう言ってあいつの顔を覗き込んだその時、俺はそのまま、固まってしまった。
ちょうど雲が夜風に流され、木々の隙間から月明かりが俺達をを照らし出していた。
掴んだ掌からジワジワと赤く染まる身体。まん丸な目を潤ませて、見上げてくる顔。
(お…お?な、何だ…っ??)
次の瞬間。俺は温かいかたまりに包み込まれていた。
そう、あいつに抱きつかれていたのだ。
ギューっと、力強く。
「な…ちょ、お、おい、み、皆月??」
さすがの俺もこの珍行動には焦った。
急いで引き剥がそうとするも、あいつは
ますます力を入れて抱きついてくる。上から見下ろす形なのでどんな顔をしているのかもわからない。
「…ぃ?」
「…っはぃっ?」
俺は必死に引き剥がそうとしながら、あいつの言葉にバッと耳を傾けた。
顔を上げたあいつは、何故か顔を真っ赤にして、泣きそうな、助けて欲しそうな顔をしていて、思わず引き剥がす手を緩めてしまった。
「っ、てもいい?」
「な、なに?」
「さわっ…てても、いい?」
……はぁ!?
予想だにしなかった相手からの予想だにしなかった言葉に、俺の頭はフリーズした。
確かにちょっと小さくて必死で可愛いかもとか思ったかもしんねぇけど、
(いやいやいやいや、男だろ!!)
「…っ、おいっ、止めろ…離せよっ」
俺は全速力でそいつを突き飛ばした。バシッと手を振り払うと、意外にもあっさりそ
の腕は離れ、あいつは後ろにドサっと倒れこんでしまった。
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