第1章

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己が嵌められたことに。 小遣いを餌に呼び出され、勝負を仕掛けられ、悔しい思いをさせられ、相手との差を理解させられた。 その差がなんなのかを説明され興味を持つよう誘導されて。 それは一体何の為に? 全ては異世界とやらに行って悪竜とかいうのを倒せるだけの力があるかどうか見極めるため。 仮に無理だと判断されたなら何も話さず教えず、単に孫と祖父の戯れで終わったのだろう。 だがどうやら眼鏡にかなってしまった。 じいちゃんは力の秘密を教えると。強くなれると言っていた。 それはつまり、予想に過ぎないが俺にも魔力があるのだろう。 今から行く場所で学ぶなり、なにかしらで扱えるようになれるという事なのかもしれない。 そして、だ。多分だが目的ー悪竜退治達成まで戻れない気がする。そんな気がする。 …俺はもし魔力を手にしたとして。悪竜とやらを倒せたとして。 じいちゃんに勝てるのか? “儂の代わりに” そのフレーズが忘れられない。 この世にはまず絶対に勝てない相手がいる。俺の場合それは間違いなく祖父だろう。 それでもいつか。せめて押し付けられた仕返しは! 落ち行く中で「やってみぃ」そんな声がした気がした。
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