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ーー半刻後。つまり現在で約30分後。
「…ひぐっ…グスッ…なんでなん?なんでなんだよぉぅ…。」
「ほれ、ちゃっちゃとせんか。負け犬。若者の体力を見せてくれるんじゃろ?
そんなペースじゃ日が暮れても終わらんぞい。
ハリー!ハリーじゃ!」
顔や衣服が土まみれで泣きべそをかきながら草むしりをする孫と、上半身裸で日課の乾布摩擦をしながら囃し立てる祖父の姿がそこにはあった。
相撲の勝敗など語るまでもないだろう。
「お主は知力も体力も技術も閃き、そして何より決定的に足りないのは…メンタルが未熟なのじゃ!」
とことんミジンコ…ゴホン…未熟な孫を追い詰めるじい様。容赦ない。
正しく鬼の所業。
だが…理由があるのだ。これは必要な事なのだ。何も孫が憎いわけでも、面白半分でからかってるのでもない。
多分。恐らく。きっと。
なぜなら孫を見る時のその目は優しく、そもそも嫌ってる相手ならば…わざわざ招いたりも勝負事を持ちかけたりするはずも必要性もないのだから。
「…ミジンコミジンコ言うなよおぉ。ミジンコだって傷つくんだぞ…ミジンコだって生きてるんだぞ…。」
まあ…そんな事は露知らず、その本人は既に心が折れかけてるが。気にしてはいけない。
むしろーー
「ふむ…頃合いかの。」
何かを確認し確信したじい様は、聴こえない程極僅かな声量でそんな事をポツリと漏らす。
そしてフゥと一息ついた後、踏ん切りをつけたしかしどこか苦しそうな表情で…ある思いをのせて言葉を贈る。
「ミジンコ呼ばわりされて悔しいか?儂に勝ちたいか?儂をギャフンと言わせたいか?
儂の強さの秘密を知りたいか?我が孫よ。」
ーーこの状態になることを望まざるも導かねばならなかった…祖父の立場の辛さこそが憎まれて然るべきなのだ。
「………じいちゃんの秘密?」
人は誰しも事実を突き付けられなければ、事実を受け入れるのは難しい。それが突拍子もないことなら尚の事。
「儂の強さの秘密…それはの。“魔力を扱える”じゃ。」
だからこそ。一度徹底的に叩かねばならなかった。どうしても勝てないと、思わせ実感させなければならなかった。
でなければ話したところで聞く耳をもちはしないだろう。
それでは困るのだ。
これからの事は笑い話や冗談では済まないのだから。
そしてそれは実際に効を成し大切な孫に興味を持たせるに充分値したようだ。
「…冗談、じゃなさそうだ。話、聞かせてよ…じいちゃん。」
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