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グォォンッ!
耳につんざく高い咆哮が洞窟内にこだまする。
ややあって、咆哮に飲まれるように小さな足音。
「誰か助けて!」
とある木製の迷宮中で、薄い若草色の髪の毛を少し結った快活そうな美少女は体長5メートルぐらいの銀色のドラゴンに襲われていた。
シルバードラゴン…ドラゴン属の中でもかなり能力が高い稀少種である。
何でドラゴンに襲われているかは定かではなかったが、運良く背中に剣を背負った若い冒険者が現れた。
「はっ!」
果敢にもドラゴンと逃げる少女の境目に飛び込み、剣を降り下ろしてドラゴンを牽制し…距離を引き離す。
「走れッ!」
冒険者は、少女の手を取って出口があるらしい光に向かって走り出した。
ドラゴンは迷宮から出てこなかった。
「はぁはぁ…。」
地面にペタリと両手をついて荒い息を繰り返す少女。
冒険者は、まだ若い少女の安全を確保したことが嬉しかった。
「大丈夫かい?」
つとめて優しく声をかける。
「大丈夫です。
それより、この洞窟にシルバードラゴンが出ると冒険者の皆さんに伝えて下さい!
あのドラゴンは危険なんです…すぐにでも討伐しなければ町の安全に関わります!」
「君は…そんな場所にどうして一人で…?」
冒険者は疑問に思ったが、少女は震えながら首を振った。
「旅の者ですが、道に迷ってしまって…。
とりあえず、近くの宿を探して自分で泊まりますから。」
迷子なのに、何で宿を自分で探すんだ…?
疑問だらけだが、冒険者はいちいち少女を追及したりはしなかった。
誰にでも言えないことはある…それを追及しないのは冒険者の優しさであり…誇りだから。
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