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次の日、冒険者が近場のダンジョンにシルバードラゴンが出ると言う話をふれたため…たくさんの冒険者が集まった。
「まさかシルバードラゴンとはな。
思わぬ儲けだと思わんか?」
昨日の冒険者の知り合いは今の仕事を投げ出して食いついた。
「なに言ってやがる…ドラゴン狩るのは俺たちだ!」
同業ライバルが食ってかかる。
「お前はどう思うよ?」
竜退治という冒険者最高の名誉に大勢が沸き立つ中、情報の主だけは浮かぬ顔をしていた。
本当に被害者の少女を詮索しなくて良かったのかと。
だいたい、町を狙いかねない危険なシルバードラゴンがダンジョンから出なかった。
これでは、町を襲いようがないではないか?
「なぁ…俺の口から出しといてなんだがこの情報…。」
グォォンッ!
冒険者が口を開くと昨日のシルバードラゴンと同じ咆哮が洞窟の入り口から反響する。
「ほら、行くぞ!
乗り遅れるな!」
大物を確信し、一斉に冒険者がなだれ込む。
「お、おい!」
急く知り合いにネタ元は慌てて止めようとしたが、止まらなかった。
振り向かずに、少しだけ本音を語る。
「なぁ…この世界にどれだけのドラゴンがいると思う?」
彼らしからぬ、やけに静かな口調が耳に残る。
「たとえパチモンでも、俺は経験と実績と夢が欲しい。
そのために、今まで嫌な先輩に怒鳴られながら…手柄を奪われながら…地べたを這いずり回って生きてきたんだろ?」
冒険者に限らず、夢だけでは生きていけない。
時にはしたくない仕事もたくさんしたはずだ。
それからようやく逃れられる…どこか不自然なことに気づいていても、先に夢があるなら逃れられない。
「…。」
知り合いは、そのまま突入してしまった。
そして、帰って来なかった。
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