夢の死神

5/5
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
世界には迷宮創師(ダンジョンクリエイター)という裏の国家資格がある。 夢を求め増えすぎた冒険者を魔法で創造した迷宮と名誉をエサに誘い出し、人目のつかぬ迷宮内で始末する者たちだ。 英雄視される冒険者の増加は一途をたどり…親の仕事を投げ出して冒険者になりたがる者も少なくない。 そのため国の産業と国家資源産出量そのものが低下し、各国で社会問題になっている。 また、処理する者がいないゴミ問題なども深刻な話だ。 少女の両親も冒険者となるために自分を捨てて、帰って来なかった。 孤児となった彼女は国営の孤児院に拾われ、そこから才能を見いだされ国の魔法学園に通い…なんと16才で迷宮創師の資格を得る。 今日が初めての仕事なのだが…思ったよりも狩れたかもしれない。 ただ、人間は難儀なもので脅すだけでは諦めないバカがいる。 いかにむごたらしい死体を晒しものにしたら後に続く者に対する薬になってくれるのか考えていたが…別の方法を考えてもよいかもしれない。 「夢…か。」 異世界から召喚したダンジョンのヌシたるシルバードラゴンの首を撫でながら、少女は優しく話しかける。 「みんな、夢はいつか叶うとか世界はもっと大きな世界が何だとか…好きなことばかり言ってる。 また、畑仕事ってくだらないって…お父さんもお母さんもいってたし。 夢って、なんだろうね?」 グォォンッ! シルバードラゴンは少女に応えるように吠えた。 夢を否定する彼女には、もはや民の世界で生きることは出来ない。 『誰か助けて!』 5才の時に親に捨てられ、悪漢に絡まれていたとき町の衛兵に助けられた彼女を人は国の犬と笑うだろうか? 民が人を作るなら、国とは何か…人とは何か。 人間が人間であるかぎり、答えは出ないのかもしれない。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!