ふれる日常 その3

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「変か?」  だからストレートに、聞いてみた。  生田は少し考えるようにアゴを引いて、 「あ……いや、まぁ、そうだな、我々は考えたことはないかもしれんな、うん」 「やっぱりそうか。まあ、そうだよな」  なにしろ相手は吸血鬼だし。  3000人殺(ヤ)ってる殺人鬼だし。  そんなのに人権って言葉使う時点で、なにか間違ってる気がしないでもないしな。 「では、一応、聞いておこうか。きみはその人権を、尊重すべきだと考えていると?」 「まあ尊重っつかー、ちったあ考慮してやった方がいいんじゃないか?」 「そう、だねぇ……」 「なんでそんなこと考えンの?」  第三者の声。  それに背中に痛みが走るほどの緊張感が沸き立つ。  油断していた――いや違う。  目の前の男の異質さに、集中力を高め過ぎて周りに気が配れていなかったという話だった。  なんという不覚。  不意打ちがあれば、既に命は―― 「……女、か?」
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