第1章

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翌日。 カラリと晴れ上がった朝の天気予報は、雨。 どこに雨の要素が混じるのだと問い詰めたいが、前線と低気圧の動きが活発で、一気に変わるのだという。朝の空に騙されないように、とお天気キャスターは言っていた。 「今日もMac貸りるよ」宗像はノックもそこそこにやって来る。 「ドアは閉め切るな」 慎一郎の言にぴたりと手を止め、宗像は顔を上げる。 「何で」 「いつもそうしている」 「えー、すきま風寒いだろ。僕は寒い!」 宗像はバンとドアを閉め切った。 「理由を聞いたことあるけど、お前の在室を知らしめる為とかなんとか言ってたっけ。それ、まだ続けてんの? 何でも女子学生ともめたって噂、あれ本当だったのか」 自分という男の来し方を思うと、どうしても良からぬ過去が悪さをしているようで仕方がない。 「モテる男は大変だねー」ちくりと宗像は言う。 放っておいてくれ。 「お前はいつまでここに居座るつもりだ」 「来年、着任するまで」 「何だと」 慎一郎は憮然とした顔をする。 「うちの学校、今、手頃な部屋がないんだってね。横山さんが使ってるところが空いたら使わせてもらえるようだけど、まだまだ先のお話だからさ。あー、やっぱり図書館行けって顔してるな? わかってる、でもさ、あそこだと仕事できないんだよねえ、やっぱ。表に出せない作業はここでやる。ボクの机、入れるスペース空けといてね。近々、総務から話が行くと思うよ」 そう言いながら、宗像はMacに電源を入れた。
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