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それに気づいていながら、雄哉はなにもただそうとはしなかった。着信音が鳴らなくてもマナーモードにしていればバイブレーション機能が働いて静かな室内にいればわかってしまう。以前は滅多にメールなど入らなかったのに、どういうわけか急に頻繁にメールが入るようになった。
不審には思ったものの、プライベートに踏み込むのも遠慮があって気づかないふりをしていた。
それぞれ仕事を持っていたため、日中、外でなにをしているのかは知る術がない。残業で遅くなったと言われれば、そうかと納得するしかないし、わざわざ訊くこともなかった。
そんな関係の夫婦だった。
そのうえ雄哉は鈍かった。だから香代の態度や表情のちょっとした変化も気がつかなかった。
ところが、そんな雄哉でもついに決定的な現場を目撃することとなったのである。
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