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その日、たまたま取引先から直帰してきた雄哉は、いつもよりかなり早い時間に帰宅した。そのことをいちいち香代にメールしなかった。今日の夕食の用意をする当番は雄哉だったし、とくにメールする必要を感じなかった。
五月も後半に入って、ずいぶん日が長くなっているせいで、この時間でもまだまだ明るい。
駅前のスーパーで、割引されていた総菜を買って帰ろうとしたときだった。前を歩く香代を見かけた。今朝着ていった夏用のグレーのスーツにパンツスタイル。
おーい、と声をかけようとした雄哉だが、香代の隣には見知らぬ若い男がいて、上げかけた手を下げた。ジーンズに濃緑のジャケットというカジュアルな服装の青年……。
二人が肩を並べておしゃべりしながら歩いていく後ろ姿を、呆けた表情で見ていた雄哉だったが、さすがに「これはおかしい」と思った。
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