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「あら、早かったのね……?」
まだスーツのままの香代は、玄関ドアを開けて入ってきた雄哉を見て、驚いた顔で振り向いた。
雄哉はなにも気づいていない様子を意識して口を開いた。
「取引先から直帰だったんだ。きみこそ……今日は早かったんだな」
「うん、そうなの」
香代は口ごもることなく言った。
「だからわたしが食事を作ってもよかったんだけど……」
「メールしてくれたら、惣菜を買わなかったんだが……ま、しかたない」
ダイニングの合板テーブルにレジ袋を置く雄哉。
「ごめんなさい。ちょっと予定外だったから……」
「そうだったんだ……」
なにがあったのか、香代は正直に打ち明けてはくれなかった。動揺した素振りも見せない。
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