エピローグ

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「詳しくはこの報告書にありますが、まず一番の懸念である、家の近くで会っていたという若い男のことですが、彼とは仕事上のつながりだけです。彼はフリーランスの仕事をしていまして、派遣社員をしてらっしゃる奥さんは、これまでいくつかの職場で働いてきました。そこで知り合ったうちの一人です。それ以上の付き合いはありません。もちろん、友人という間柄でもありません。たまたま会ったということです」  先野の右隣にすわって聞いていた三条愛美は冷や汗ものだった。 「外泊に関しても、奥さんの言われるとおり、終電を逃して、スマホも充電切れだったので、連絡できなかったと……」  淡々と報告を続ける先野は、表情ひとつかえることない。しかも虚偽の報告である。  もちろん、重大な規約違反である。  規約違反というなら三条も同罪だ。ただ、三条も本当のことを打ち明ける気はなかった。タイムリーパーなど、工作員という設定より突飛だ。到底信じてはもらえまい。それがわかっているから、三条は口をはさまない。
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