エピローグ

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 あのあと調べたところ、香代の父親は健在で、だから香代がこそこそとKSとの接触を続ける必要はなくなった。  歴史は変わってしまったのだ。  先野が保証したように、以降、香代が浮気を疑われることはないだろう。もっとも、将来、浮気をしないとは言いきれないが――。ともあれ、今は幸せなはずだ。 「さて……次の仕事は……」  自分のデスクに戻っていく先野。  その背中を見てひとつ息を吐くと、三条もデスクに戻る。調査案件は他にもあった。気持ちを切り替えて、取りかからなければならない。  が、思い出してしまう。  あのとき、KSは言った。  ――きみにも、もう一度会いたい人がいるだろう。  いったい誰のことを言っているのか、三条には思い当たるフシがなかった。死んだ近親者もいなかったし。
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