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年配のおばちゃんには、
「あんたの顔を見ると、つい買っちゃうんだよね」
と、よく温かい声をかけてもらった。一緒に働いた同僚は、皆が皆親切、というわけでは決してなく、人によってはろくに返事をしてもらえない相手もいたけれど、それでも、外で働いていたころは、たえず新しい風にさらされて、心が弾んだり滅入ったりと、さまざまな波はあったものの、それすらも、今思えば、十分に日常というものを味わい尽くしていたあかしだと、胸焦がれて懐かしむくらいに、現在の生活は単調で味気ないものへと、気がつけば、すり替わっていた。それでも、自分の食いぶちくらいを稼ぐために、画面に向かわねばならなかった。そう、それが私自身のため、なのだ。
そんなある日、少し離れて暮らす妹のなっちゃんから、メールが届いた。
「親愛なるお姉ちゃま
先日はお呼ばれ、ありがとう☆彡 ステキなマンション、ステキなお部屋に超ビックラしたよ! カントリー調の家具のリビングにあいぞめ(だよネ?)ののれんをさり気なく合わせる、センスの良さ、さすがはわがお姉ちゃま!グワァンとはぁとをわしづかみにされちゃいました!出してくれたマカロニグラタンも、したがビックラするウマさでした!
ところでお姉ちゃま、こんど仕事を始めたって言ってたよね。もうお金は入ったの? またまた悪いんだけど、すこぅしだけ貸してもらえないかなぁ? バイト代だけでは生活が、とぉっても苦しいんだぁ……ごめんネぇぇぇぇぇ」
またしても、溜め息がこぼれていた。五つ下のなっちゃんとは、私が結婚するまで、姉妹で一緒に生活していた。私は彼女の、保護者のようなものだった。なっちゃんは高校を卒業後、まずアパレル業界で少しだけ働き、その後は歯科医院の受付、コンビニ、ファミレス、弁当工場などと、目まぐるしく仕事を変えてきた。ひどいときは、三日目の朝にやめてくることもあった。同居していたころは、私が家計を締めていたので、問題はなかったけど、その後のなっちゃんが、一人で生活していけるのか、さらに、果たして一人で生きていけるのか、はなはだ心もとなかった。悪い予感はやっぱり、私の前を、素通りしてはくれなかった。無心されたのはこれで、何度目だろう。以前に私が、やんわり断ると、
「お姉ちゃんまでそんなこと、言うんだ! もういい! もういい。もう、こうなったら」
なっちゃんは、目にいっぱい涙を
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