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ためて、
「こうなったらフーゾクで働いてやる!」
と叫んだ。私は慌てふためき、さしあたり財布を開けて、万札二枚を差し出した。妹はそれを受けとりながら、
「さすがはお姉ちゃま! 大好きよぅ」
と、エクステで拡大した目をさらに広げ、先ほどの泣き顔はどこへやらの満面の笑みで、大げさに抱きついてきた。このときから、なっちゃんが「フーゾク」と叫ぶ→私がお金を出す、という構図が出来上がってしまい、貸し金だけが雪だるま式に、膨らんでいった。まだ一円たりとも、もちろん、返してもらっていない。
「私はただ、主人や妹や友だちと、仲良く平和に暮らしていきたいだけ、なんです。何も大それた望みなんて、持っていないし、特別お金持ちになりたいとも、思ってません。ただ平穏に、暮らしていきたいだけです。だから、自分の周りの人たちを、私なりに、とても大事にしてきました。多少、自分のことは後回しにして、主人や妹のために良かれ、と思うことを、一生懸命に、率先して、やってきました。私は本当に色々と、我慢してきたのです。相手に、合わせてきたんです。でもその割には、自分の思い描いていたようには、ちっとも物ごとが回っていないように、近ごろ思うのです」
新庄さんに対して、私にしては珍しく、饒舌に自分のことを語っていた。
「先日も、主人から叱られました。私の通帳を見て、『残金が減ってるけど、どうして?』と聞かれ、妹に貸したと正直に答えると、『お人好し過ぎる』『きみのお金は家のお金でもあるのだから、いくら姉妹だからってむやみに貸すものではない』って注意されました。いくら事情を説明しても、『きみはあの強欲な妹に、うまい具合にむしり取られているだけだよ』と、取り合ってくれないんです」
「そのあとメールで妹に、主人とのやりとりを、そのまま伝えてから、『もうこれ以上、お金を貸せない』と送信しました。すると、『お姉ちゃんはアタシのことなんて、どうでもいいんだ!』『結婚してからお姉ちゃんは人が変わったよ!』『これでテンガイコドクになったんだ! いつでも手首を切ってやる!』と返ってきて……。もう、私、一体どうしたらいいんだろうと、ほとほと弱りきっています」
「主人の意向は、できるだけ汲んであげたいと、妻として、願っています。けれど、妹のこともやっぱり、見捨てるわけにはいきません。あの子には、私しか頼る人がいない、という思いもあるし、
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