溺れる身体

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だけど忘れてた。 強く抑え付ける程… その分反発心が募って、逆効果だって事を。 「茉歩。 チェックする契約書ファイル、全部持って来てくれ」 目の前に欲求対象をちらつかされれば、尚更。 「はい。お願いします」 頼まれた数冊のファイルを差し出すと。 以前なら直接受け取ってた状況なのに… 「ああ、ここに置いてくれ」 書類を除けながら、そのスペースを指示する専務。 途端、端の書類が落ちそうになって… ファイルを置いていた手を慌てて伸ばすと。 同じくな専務と、手が触れる! あの夜以来の、専務の体温。 それを感じてしまったら… もう駄目だ。 抑え付けられてた欲が一気に弾けて…! どちらからともなく、キュッと指をしがみつかせた瞬間。 専務はそれを払って… 「っお互い、いい反射神経だなっ」 軽く笑ってその場を躱した。 拒否されたような状況に、この胸は切り裂かれて…! 行き場を失くして暴れる欲に、この心は弄ばれて… とにかくその渦から、逃れたかった。
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