溺れる身体

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「茉歩、打ち合わせの資料を見せてくれ。 ちょっと確認したい事があるんだ」 この人はほんとに。 見事なまでに、仕事とプライベートのスイッチを切り替えてて… 激しく抱かれてるのが夢のよう。 いくら背負ってるものの重みが違うからとはいえ… 私ももっとコントロール出来るようにならなきゃ。 「私も泳ぎたいです…」 溺れてる現状から… 本来の自分らしく。 そして早く、この欲情の渦から抜け出したい。 小さな声で、聞こえないように呟いたのに。 「プールジムが完成したら、2人っきりで泳ごうか」 資料を確認してる筈の慧剛が… 小さな呟きをちゃんと捕らえて、それに応えた。 そんな事ですら。 それどころか、そんな提案も嬉しくて。 抜け出すどころか… どんどんその渦に溺れてく。 「職権乱用ですね」 間に受けていいものか… とりあえずそう躱すと。 ハハッ!と、やんちゃな笑顔が零れて。 大好きな笑顔を前に、愛しさが込み上げる。 寧ろ今は、慧剛の何もかもが好きで… 愛しさで埋め尽くされた胸は、息も出来ないほど苦しくなる。
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