溺れる身体

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そして後戯では… 「茉歩、っ……」 少し切なげで、とても愛しそうな眼差しで囁きながら… 親指で頬を撫でて。 髪に絡んだ指が、そこを撫でて。 優しくて甘い… 溶けそうなほど甘いキスを、繰り返す慧剛。 この後戯が妙に官能的で、だけど情愛に満ちてて… 胸が切なく疼いて、どうしょうもなく苦しくなる。 そっか… きっと溺れてるから、息も出来ないくらい苦しいんだね。 「お互い、名前ばっかり呼んでるね…」 抱き合ってる時は特にそう。 どんなに激しく求め合っても、私達は愛の言葉なんて口にしない。 「… 他には何も、言えないからな…」 それは、どういう意味? 愛が存在してないから、そんな言葉を口に出来ないって事? それとも。 少しは存在してても、責任を取れない関係だから? 答えはきっと… 前者だ。 ー「俺達は別に、愛し合ってもなければ」ー 私達の間に、愛はない。 だとしたらこれは、不倫なのだろうか? 幾度となく、自分に問いかけて来た疑問。
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