溺れる身体

26/29
前へ
/300ページ
次へ
「はい… もう少し、待ってもらえますか…?」 いつしか、雨は降り始めてて。 だけど、持っている傘を差す訳でもなく。 屋根のある場所に避難する訳でもなく。 タクシーだけ引き止めると。 雨に打たれている事も忘れて、ただ佇んだ。 大事な接待だし、慧剛は必ず戻って来る。 そう思って、しっかりしようとしても。 2人の会話が、頭の中を駆け巡って… その処理とショックに翻弄される。 ー「落ち着け、露美」ー 見覚えのある顔はもちろん。 ロミと言うその名前から、彼女は紛れもなく聡の不倫相手で。 彼女の言う"彼"は、聡に違いなくて。 そして… ー「文句があるなら婚約なんて解消すればいいでしょ!?」ー 彼女は、慧剛の婚約者で…! しかも! ー「とにかく、部屋に戻るんだ」ー 2人は、このマンションに住んでいて… きっと。 慧剛との今があるのは、成り行きじゃない。 ねぇ、慧剛… 私に近づいたのは、婚約者に手を出した聡への報復? どこまでが偶然で、どこからが策略なの? 心が割れそうになる。
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3397人が本棚に入れています
本棚に追加