侵食の体温

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「ところで専務、社長はまだ長期出張から戻られないんですか?」 雇用されてから未だに、挨拶どころかまだ顔も拝見してない。 「もう暫くかかるかな。 おかげで俺の仕事が増えて大変だよ」 「その割にはこんなに風に… けっこうプライベートの時間がありますよね」 「そんな皮肉が出るって事は… やっぱり俺とのメシ、嫌がってるだろ?」 「さあ、どうでしょう?」 わざと答えを濁して笑うと。 専務もハハッって、やんちゃに笑う。 最近はこの笑顔に癒されて、けっこう好きだったりする。 「でもまぁ俺は、人を使うのが得意だからね。 こんなにプライベートが取れるのも、仕事を上手く周りに割り当ててるからなんだ。 ずるいだろ?」 ずるい、とは思わない。 だって見たところ、誰も専務に不満を持ってなさそうだから。 それどころか、重要な仕事を任されて嬉しそうだったり。 信頼してくれる専務を慕ってたり。 きっと鋭い洞察力を活かして、どう扱えばいいのか心得てるからこそだと思う。 最早、流石としか言いようがない。
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