侵食の体温

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「そうじゃなくて…! ごめん、何でもないんだ… 忘れてくれ」 聡はそう濁したけど… それってもしかして、離婚自体を迷ってる!? じわじわと効いてるような策略の効果に、胸が騒いだ。 「それよりっ、 別れたら茉歩は、実家に戻るの?」 「… 戻る訳ないでしょ… 仕事があるのに」 大崎不動産で専務の秘書をしてる事は、先日話した。 だから、県外の実家に戻る訳ない。 第一。 不倫離婚された身で、あの小煩い両親の田舎に、どの面下げて帰れるっていうの!? デリカシーが無いにも程がある! 「そっか… けどこの部屋は、…引き払うよ?」 「…わかった」 騒いだ胸は… いとも容易く、打ちのめされた。
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