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 そう笑われた。けれど、僕は親しくなろうと有里紗に全く恋愛感情は沸かない。最初の印象が悪かったのは改善されても、そう言う対象にならない。 「クールビューティ速水?」 「ビューティはおかしいだろ」 「え? 何、気付いてないのか? 速水、密かに女子の間で人気高騰中」 「いい加減な事言うなよ」  からかうクラスメイトの言葉にも僕は笑って返す事が出来た。高校生になってから、ようやくからかう言葉もスルーする事が出来る様になった。中学生まではずっと千世と比べた悪意しか感じていなかった。  予鈴が鳴って、クラスメイトは席に戻って行く。こう言うのが、誰にも影響されない普通の十六歳なのかと思う。僕は今までずっと千世の影響を受け続けていた。千世が嫌いなんじゃない。僕が、自分を確立出来る程強くないのが嫌だったんだ。
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