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 僕はその女子を避けて廊下を先に進んだ。普通にしていれば可愛い感じなのに、残念な女子だな。面識もないのに、いきなり何を考えてるんだろう。せめて、場所を選んで、自分の名前を言っていれば僕だって多少は譲歩したかも知れない。自分の事を知っていて当然、と言う感じの態度はいい印象にはならない。  後ろから、同級生のざわついた声が聞こえる。 「菅原もすげえけど、速水も冷たいよなあ」  ふと耳に入った声はそう言っていた。僕が冷たいって見えるのか。振られた方が可哀想な立場になるんだな。状況も何も加味されない。単純な上辺の情報。僕は溜息が出る。さっさと学校を出よう。  うんざりした気分になった僕は校門を出てまっすぐに駅に向かう。  別に高校生が誰を好きになって誰と付き合おうが、それがおかしいとは思わない。けど、僕はそう言うのが苦手だ。今でこそ、そこそこ普通にしているけれど、中学校まではずっと出来のいい妹と比べられて、そして出来のいい妹への逆恨みの様なものをよく食らっていた。そのせいもあってか、未だに人付き合いが苦手だ。だから、女子と付き合うとか出来ない。多分、信用出来ないと思うから、無理だ。
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