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 ようやく高校生になって、比べられる事がなくなって、理不尽な嫌がらせもなくなって少し慣れてきたと言うのに。何だか嫌な感じだったな、と思う。目立つ様な事をした覚えはないし、単純にあの子が無神経なだけだったらいいけど。何故か不穏な空気を感じた。  嫌だな。面倒臭いな。  かと言って、どうする事も出来ない。もう一回溜息をついて、駅の改札を潜って丁度来た電車に乗った。夕方の電車には高校生が多い。何人か集まってはどうでもいい話をしている。そんなに群れていないとだめなのかな。一人だとそんなにおかしいかな。高校生の群れが多い電車の中で僕は疎外感を感じる。  嫌だな。今更、慣れてる筈なのに。  電車が止まって、また高校生の群れが入ってくる。女子が集団でうるさい。僕が吊革に捕まって俯いていると、突然声をかけられて驚いた。 「ちかちゃん!」  その声は明らかに僕を呼んでる。僕をそう呼ぶのは千世だけだ。僕の双子の妹。 「……何? ちせ」 「何じゃあないでしょう!また一人で考え込んで俯いて!俯くんじゃないって言ってるでしょ!」  さっきの女子の勢いは少し千世に似ていたかも知れない。
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