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「うるさいよ。千世、友達と一緒なんじゃないの?」
「いいよ、ちゃんと言ってきたし。千佳ちゃん、何か嫌なことあったの?」
「……別に」
話をはぐらかすと千世は下から僕を覗き込んでくる。頭一つ半小さい千世からは僕が俯こうと顔は隠せない。
「いいけどさー。千佳ちゃん私の事嫌いだもんね」
ぷい、と顔を背けて千世は拗ねる。
「うん。嫌いだよ」
「嘘ばっかり。千佳ちゃん、すぐ嘘つくんだから」
僕の言葉に千世は全然ひるまない。いくら双子の兄妹でも自信があり過ぎだろうと思う。同じ顔の女の子は可愛い顔で笑う。千世は誰にでも同じ顔で笑う。千世は、はきはきと元気で、誰にも人懐こい。双子の僕が言うのもおかしいけれど、可愛い。それは、顔だけじゃなくて性格が伴って可愛いのだと僕は思う。
「千世、僕の事構うなって言ってるだろ」
「それは出来ないよね。だって、千佳ちゃん私のお兄ちゃんだし」
いくら僕が距離を置こうとしても、千世はやすやすとそれを乗り越えて僕に踏み込む。ただ、血が繋がった、最初は同じ卵子であった双子と言うだけで。
「ほら、千佳ちゃん次降りるよ」
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