1

5/8
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
 次の停車駅のアナウンスが流れたら千世は僕の片手を握る。双子に兄と妹など曖昧だが、僕は千世の方が姉なのではとよく思う。顔はよく似ていても、性格は等分に与えられない。性格のいいところは全部千世に行った様に思う。  電車が止まる衝撃で千世が僅かによろめくのを繋いだ手で引き寄せた。 「大丈夫か?」 「うん。ありがとう、千佳ちゃん」  千世は僕には凄く無防備だ。産まれた時から一緒に居て、同じ顔をしていて、兄妹だから当然だけれど、僕以外に態度が違うのを知ってる。 「ほら、千世。帰ろう」  そう言うと、千世はまるで彼氏にでもするみたいにくっついてくる。電車を降りて、同じ家に帰る。僕と千世は双子で、兄妹で、結局は一番互いの事を理解出来る。どんなに性格が違おうと、変わらない。僕が一方的に千世に意地を張っても、意味をなさない。それを僕は高校生になって、千世と学校が別れてようやく気付いた。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!