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勝ち鬨にも似た男たちの声に足が震えた。眼下には白い波しぶきを絶えず抱えた海が広がり、海岸線には獲物を駆る猛獣のごとく異国の猛者共が山の斜面を駆け上がる姿が見える。
あの者達がこの砦にたどり着くのも時間の問題だ。待機中の兵士は皆、怯えながらも辛抱強く時が来るのを待っていた。
「女王はいるのか」
すぐそばで剣を磨いていた兵士が呟いた。砦の兵士は十三歳から十八歳と若い。国の主力は海の上で果てた。中央に戦力はない。この砦とここにいる少年たちが言葉通り最後の砦となる。
「言い伝えどおりにその女王とやらがいるのなら、俺たちは助かるだろうよ」
投げやりな返答をした俺の声を遮るようにすさまじい咆哮が砦を包み込んだ。轟音とともに激しい風が山頂から降りてくる。山を守る木々が倒れるのも気にせず女王が通った。
砦に歓声が上がる。異国の猛者共はこれからの数ヶ月、この国を守ってきた女王になぶられるだろう。地嵐と呼ばれる女王に。
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