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「おい遠野(とおの)、レジ混んでる」
店長の声に俺は、品出しの手を止めて顔を上げた。
「うわ! やっべ!」
初冬だというのに汗ばむような陽気だったせいか、冷たい飲料がやたらと売れた。ガラガラになった冷ケースへのペットボトル補充に夢中になりすぎて、一台しか稼働していないレジに長蛇の列が出来ている事に気付かずにいた。
スーパーが一番混雑する時間帯に突入だ。
「お待たせ致しました! こちらのレジにどうぞ」
二番目に並んでいた客を誘導しながら、唯一稼働していたレジに立つ都築 真(つづきまこと)をチラリと見れば、入ってひと月経つというのに相変わらずカゴ詰めが不器用で苦笑してしまう。
学部は違えど同じ大学で同じ二年生、シフトがほぼかぶっているせいもあり、俺が教育係を仰せつかったのだけれども。
スラリとした長身痩躯の上に、パーツも配置も完璧なイケメンフェイスが乗っかった都築は、そのパーフェクトな見た目と違って恐ろしく不器用なやつだった。
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