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「お前、またパンの上に肉のパック乗っけてただろ。パンだの玉子だのの潰れるもんは最後に乗せろっつったよな。あとな、雑すぎっから、カゴ詰め。もちっと綺麗に入れろ。重いもんか下、軽いもんが上、端から詰めて隙間を作らない!」  都築はその麗しい顔で俺をじっと見つめると 「……遠野って、よくしゃべるよなぁ。おかんか?」 呆れたような声で呟いた。 「なぬぅ!?」  そこで新たな客がレジに並んでしまい、俺は反射的に出た営業スマイルと習慣的な高速スキャニングでバサバサと買い物カゴを捌いていく。どうよ、この美しいカゴ詰め。  ふふん、と振り向くと、俺が客だったら絶対ムッとするってぐらいモタモタした都築は、あ、またパンの上に肉乗っけてる。あれでよくクレームが来ないもんだな。  「ありがとうございます、またお越しくださいませ」とマニュアル通りに客の顔を見つめる都築は無愛想だが腹が立つほど男前で、大抵の客はハッとその美しさに見惚れてしまうもんだから、顔がいいって得だ。くそ。
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