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「亮平? どうして泣くの?」 「お前が、名前、呼んでくれたから」  そんなことぐらいで泣くなんてバカみたいだ。わかってる。でも『亮平』なんて平凡な名前が、都築の唇から発せられた途端に、特別な意味を持つ言葉のように聴こえるから。 「亮平、好きだよ」  優しく髪を梳かれて見つめられると、照れ臭くてたまらないからそっぽをむいてやる。 「顔、見せてよ、亮平」 両手で頬をむいっと正面を向かされ、首もとにぶら下がるようにして唇を重ねてくる。絡み合う舌から流れ込んでくる痺れるような甘い官能。 「真、まこと……」  同じように名前を呼べば、心が深く強く繋がれた気持ちになる。俺の名前が特別な意味を持ったように、それ以上に尊く大切な名前。この世にたったひとりの、俺の大切な人。 「まこと」 「亮平、好き。だから俺を亮平のものにして」
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