2/8
前へ
/92ページ
次へ
 日下部くんは店を辞めた。 あの日あのままロッカーで泣き崩れていた日下部くんは、いつまで経っても施錠されないとセキュリティ会社から連絡を受けて駆けつけた店長に回収されたそうだ。 で、そのまま退職届を書いたそう。  年の瀬の一番忙しいときに開いた穴は大きいけれど、俺は異常なテンションでいつもの二倍以上働いている。 混雑したレジにイラつく客から怒られても、後ろのレジから都築の声が聞こえる。 ビールケースを積み上げて、痛む腰をさすりながら振り向けば、大好きなやつの顔が見える。 頑張れないわけがない。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

537人が本棚に入れています
本棚に追加