一幕 まさかの事実

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The下町な情景が広がるここが私の住む町。 今でも喧嘩が絶えず、よく祖父の所へ人相の悪い男たちが来ていた。 人と人との距離が近く、祭りとなれば町の人々一丸となって楽しむ。 そんな人情の残る町。 私の好きな町。 人の流れのなかに小さな穴が出来た。 人々の目が嫌なものに変わり、そこに居る人を避けて通る。 そこに居るのはヤクザ風の一人の男。 まだ若い二十歳に成るか成らないか位だろう。 血まみれで必死に何処かへ向かっているのが分かる。 「肩、貸します。」 誰も声を掛けてくれるとは想わなかったのだろう。 周囲の人たちと同じく、奇っ怪なものでも見るような目でみつめてくる。 とわ言え怪我だらけの男を放っておくのは看護師の卵としてはどうかと思う訳で…。 まぁ先ずは手当てしましょうって言うのが普通の 看護師だとは思うが、そこはそれだ。(どれだ?笑) 「早く肩、歩くの辛いんでしょ。」 「お、おう。」 「何処へ行きますか?」 「赤木組事務所まで…。」 「赤木組事務所ね…、て、赤木組ですか?」 「へい。」 あー本筋のヤクザじゃん。 変なのに首突っ込んじゃったかも。 「あの~迷惑でしたら構いません。」 そんな死にかけの声で言われてもねー。 「重症患者をほっとく訳にはいきませんから。」 「すいやせん。」 …そういえば私、赤木組事務所の場所なんて 知らないや。 取り敢えず適当に歩いてると小さな古いビルに 着いた。 「ここです。」 〔赤木組〕二階の一角に堂々とかけられた看板。 男が肩から離れドアを開け、崩れるように部屋に入って行った。 「若頭、顧問の魂取られやした、すいやせん!!!」 部屋の中の居たのは三人の男たち。 黒スーツ姿の男、熊みたいな男に、グイグイタイプっぽい坊主の若い男。 「遅かったか…。」 「加佐見〈かさみ〉さんどうしやす。」 黒スーツさんは加佐見さんと言うらしい。 「分家の井熊組に協力願いに行く。」 「聖〈ひじり〉は凌〈りょう〉の手当てを頼む。」「市松は俺に着いてこい。」 「「へい!!!」」 グイグイタイプさんが聖さん、怪我人さんは 凌さん、熊さんは市松さんか…。 指示を出してるのは加佐見さんだからこの人が多分若頭なんだろう。 何を傍観してるんだ私は。 先ずはここから立ち去ろう。 背を向けて帰ろうとしたのだが完全に加佐見さん と目が合ってしまった。めんどくさーい。 「あんたは…」 「えーと…そこの怪我人さんを送ってきました。」 「そりゃすいやせん。ご迷惑をおかけしやした。」 「いえ…。」
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